
TOTO 「宇宙の騎士 TOTOファースト」
1978年か79年のアルバムだと思う。当時は今まで裏方だったスタジオミュージシャンが注目を浴び初めていた時代で、LAのスタジオギタリスト、ラリー・カールトンがソロアルバムを発表して、クロスオーバー・ミュージックからフージョンと呼ばれる音楽が人気を博していた時代だった。
クロスオーバーとはロックとジャスがクロスした音楽、フージョンはロックとジャズが融合した音楽を指していたが、当初はクロスオーバーはロックよりのガツっとした音楽(マハビシュヌ・オーケストラやジェフ・ベク、コロシアムⅡなど)を指していたが、フージョンはもう少しジャズよりの音楽を指していたように思う。
いずれも、基本はヴォーカルなしのインスト音楽が主流だったが、ニューヨークのスタジオニュージシャンが集まって結成されたSUTAFFがR&Bを基本としたSOULフルな音楽で好評を得た後に、LAの若手スタジオミュージシャンで結成されたのがこのTOTOだ。
しかし、このバンドはインストではなく、ヴォーカリストを擁してアルバムを発表した。スタジオでのフラストレーションを発散するような明快な(単純という意味ではない)なロックアルバムを作ってデビューしたのだ。
このアルバムの最もオススメな点は、曲のメロディーだろう。とにかくメロディーが良くて覚えやすくてキャッチーと言ってもよいほどだ。スタジオニュージシャンの難しい玄人受けする音を期待していたら、真逆の音が出て感じだ。
メンバーはリーダーのドラムスのジェフ・ポーカロとキーボードのスティーブ・ポーカロのポーカロ兄弟、そしてPOPで曲作りの才豊かなキーボードのデビッド・ペイチ、ベースのデヴィッド・ハンゲイト、そして、ギターヒーローと呼んでもいいだろう、スティーブ・ルカサーだ。
メンバー全員、20代だと思うが、キャリア・実績ともベテランの域だ。78年から85年ごろのアメリカの音楽、特にLAのロック系のアルバムで彼らのクレジットは凄まじい数だったと思う。
ボズ・スキャッグスの「シルク・ディグリーズ」「ダウン・トゥー・ゼン・レフト」そして「ミドル・マン」
は当たり前として、スティーブ・ルカサーのゲストの名演を上げればアース・ウィンド・ファイアーやレィ・ケネディ、オリビア・ニュートン・ジョンなど、どれも音を聞けばすぐにルカサーとわかる音だった。
美しいオーバードライブ・トーンで、ロング・トーンに揺れ幅の大きなヴィブラートをかけるフレーズ、早く弾くフレーズは、クロマチック(半音)的な動きで、ギターのネックをローポジからハイポジへ高速でチェンジしていく。そして、3弦と1弦でインターバルのある音でのフレーズで切なさを盛り上げる…。
たぶん、テクニックとか、音楽の旨みの部分だとか、何よりも、「音楽」というモノを作りあげる職人としてはとてつもない力量をもったギタリストだと思っている。
私は大阪のブルーノートで、スティーブ・ルカサーのギターを弾く姿をすぐ近くで見た経験がある。(ちなみに握手して、ピックももらいました!)「TOTOⅣ」でグラミー賞を獲る直前の81年の来日公演を大阪府立体育館で観た思い出を持つ自分としては、スリムでカッコよかったけど、遠くて小さくかったスティーブ・ルカサーが、目のまえで(最前列のテーブルに座っていた私の目の前に、左手を持ってきたので、実測5cm!)リラックスしてありったけのテクニックを使って、観客を楽しませてくれた。本当に、アメリカの、西海岸の、カリフォルニアの、明るい、そしてプロフェッショナルなギタリストだ。
最後にこのアルバムの私なりの聞きどころは「you are the flower」の変調の多いバックに合わせてスリリングに、そして流麗に弾くルカサーのソロと、名曲「HOLD The line」の日本人なら感じちゃうメロディーだと思う。TOTOの思い出は色々と尽きません。

