
エリック・ジョンソン「未来への扉」
ミュージシャンズ・ミュージシャン。長い間、エリック・ジョンソンはそう呼ばれてきた。地元テキサス州のオースティンでは、すでに有名なギタリストだった。1980年にクリストファー・クロスのデビュー作にして、傑作「南からきた男」のラストの曲「Minstrel Gigolo ジゴロの芸人」という曲で、すばらしく独創的でありながら、美しいソロを弾いたのが、私がメジャーでエリック・ジョンソンの演奏と名前を聞いた最初だった。
それから、しばらく音沙汰なしで、85年ごろにソロ「Tones」を発表。このアルバムは若くて才気に溢れた、そして少しカワイイ曲が多いアルバムだった。それからまたしばらくの沈黙。1990年に出されたのがこの「未来への扉」だ。
スタートから、SF映画のSEのような音、しかししっかりと、エリック得意のハーモニックス奏法で美しいベルチャイムサウンドを聞かせている。それから、一転してぶっといオーバードライブサウンドでのフリーのギターソロ。この1分ぐらいのソロが素晴らしい。基本的にはペンタトニックの音使いなんだけど、ポジションが低音弦から高音弦へ、またローポジからハイポジへ、ラストの高速弦飛ばしピッキングは、ピックと中指の併用で弾いている。ライブでは平気で5分ぐらい引き倒すそうだ。
それから、今ではギターインストの名曲になった「Cliffs Of Dover 遥かなるドーヴァー」が始まる。シャッフルの軽快なナンバーだ。特に中盤の3連のフレーズが印象的。この人の場合、フレーズの微妙な印象を追求するために、スライドにしたり、ハンマリングにしたり、微妙にピッキングの位置を変えたり実にマメに弾き方を変える。
そして、曲が進むとどんどん乗って、すばらしくノリのいいフレーズが、キレイなギタートーンで弾かれていく。このアルバムでのエリック・ジョンソンの音は、ハードなディストーションサウンドも、マイルドオーヴァードライブトーンも、もちろんクリーンなトーンも全てが、ギタリストのお手本とすべきサウンドだろう。
もちろん、プレイも曲もすばらしい。声も良くて、ボーカル曲もいい。とてもカラフルなアルバムだが、エリック・ジョンソンのギタリストとしてのカラーが一本筋が通っているアルバムだ。
エリック・ジョンソンという人は、ギターが好きで好きでたまらない感じがするギタリストだ。その姿勢も富や名声のために練習しているんじゃなくて、ただギターが好きで、自分の音楽を突き詰めている実直なイメージがする。
今から、2,3年前に大阪ブルーノートで、エリック・ジョンソンのアコースティクライブを見る機会があった。エレキではなかったので、弾きまくりではなかったが、その歌はしっかりと聴く事ができた。また。このアルバムにも収録されている「Song for George」を目の前で弾いてくれました。最後に握手したエリックの手は、とても大きく手の厚みが薄い、きれいで繊細な手でした。

