2008年5月25日日曜日

エリック・ジョンソンの極上のギター・トーン


エリック・ジョンソン「未来への扉」

ミュージシャンズ・ミュージシャン。長い間、エリック・ジョンソンはそう呼ばれてきた。地元テキサス州のオースティンでは、すでに有名なギタリストだった。1980年にクリストファー・クロスのデビュー作にして、傑作「南からきた男」のラストの曲「Minstrel Gigolo ジゴロの芸人」という曲で、すばらしく独創的でありながら、美しいソロを弾いたのが、私がメジャーでエリック・ジョンソンの演奏と名前を聞いた最初だった。

それから、しばらく音沙汰なしで、85年ごろにソロ「Tones」を発表。このアルバムは若くて才気に溢れた、そして少しカワイイ曲が多いアルバムだった。それからまたしばらくの沈黙。1990年に出されたのがこの「未来への扉」だ。

スタートから、SF映画のSEのような音、しかししっかりと、エリック得意のハーモニックス奏法で美しいベルチャイムサウンドを聞かせている。それから、一転してぶっといオーバードライブサウンドでのフリーのギターソロ。この1分ぐらいのソロが素晴らしい。基本的にはペンタトニックの音使いなんだけど、ポジションが低音弦から高音弦へ、またローポジからハイポジへ、ラストの高速弦飛ばしピッキングは、ピックと中指の併用で弾いている。ライブでは平気で5分ぐらい引き倒すそうだ。

それから、今ではギターインストの名曲になった「Cliffs Of Dover 遥かなるドーヴァー」が始まる。シャッフルの軽快なナンバーだ。特に中盤の3連のフレーズが印象的。この人の場合、フレーズの微妙な印象を追求するために、スライドにしたり、ハンマリングにしたり、微妙にピッキングの位置を変えたり実にマメに弾き方を変える。
そして、曲が進むとどんどん乗って、すばらしくノリのいいフレーズが、キレイなギタートーンで弾かれていく。このアルバムでのエリック・ジョンソンの音は、ハードなディストーションサウンドも、マイルドオーヴァードライブトーンも、もちろんクリーンなトーンも全てが、ギタリストのお手本とすべきサウンドだろう。

もちろん、プレイも曲もすばらしい。声も良くて、ボーカル曲もいい。とてもカラフルなアルバムだが、エリック・ジョンソンのギタリストとしてのカラーが一本筋が通っているアルバムだ。
エリック・ジョンソンという人は、ギターが好きで好きでたまらない感じがするギタリストだ。その姿勢も富や名声のために練習しているんじゃなくて、ただギターが好きで、自分の音楽を突き詰めている実直なイメージがする。
今から、2,3年前に大阪ブルーノートで、エリック・ジョンソンのアコースティクライブを見る機会があった。エレキではなかったので、弾きまくりではなかったが、その歌はしっかりと聴く事ができた。また。このアルバムにも収録されている「Song for George」を目の前で弾いてくれました。最後に握手したエリックの手は、とても大きく手の厚みが薄い、きれいで繊細な手でした。

2008年5月18日日曜日

ジョー・サトリアーニはロックギタリストのお手本です


ジョー・サトリアーニ「フライング・イン・ア・ブルー・ドリーム」

まさに「完璧ロックギタリスト」とは彼のことを指すのだろう。この場合、「完璧」より「ロックギタリスト」に重点を置いてほしい。当然、超が三つぐらいつくテクニシャンなので、どんなジャンルの曲も全てジョーサト流に弾きこなすことが出来るが、それが全て「ロック」なのだ。

ギターの音色もカラッとした少し粒立ちの粗めのオーバードライブサウンドなんだけど、その音色も彼に完璧にコントロールされたフレーズの中では、究極とか永遠などの言葉を連想させ得るものだ。
ジョー・サトリアーニは、ジャズやフュージュンではなくて、「ロック」としてのギターインストを確立したといってもいいと思う。当然、この分野の先駆者としてはあの偉大なジェフ・ベックがいるのだが、ベックの音楽はロックからジャズにアプローチした音楽であり、お世辞にもPOPだとかキャッチーな曲というわけではなかった。それをジェフ・ベックというギタリストの才能・個性で素晴らしい作品に仕上げていた。

しかし、このジョー・サトリアーニの曲はジェフ以上のテクニックを持ちながら、圧倒的にPOPでキャッチーな曲を、完全なロックとして演奏している。この「フライング・イン・ア・ブルー・ドリーム」もタイトル曲の妖しげなテーマから、全てのフレーズが曲のひとつとなったような演奏だ。
DVDで、ジョーサトがギターを弾く姿を見たが、あのでかい手と長い指がギターのネックの上を蜘蛛のように動いており、もうどんな難しいスーパープレイも軽々弾ききってしまうその姿は、まさに「ギターの神」と呼ぶにふさわしいものだ。
ただ、この人が2000年代になってから、少し以前の勢いがなくなったのは、やっぱりそのすごいプレイが原因なんだと思う。正直言って彼のアルバムはどれも、曲はバラエティーに富み、彼のプレイはスーパープレイなんだけど、「ジョーサトなら、なんでもできる」という思いがあるから、よっぽど何か新しいことにチャレンジしないと、いつも同じ思いで彼のアルバムを聴いているように思う。巧すぎるのも加減の問題かな?

2008年5月7日水曜日

渡辺香津美はメイド・イン・ジャパンを誇れるテクニシャン


渡辺香津美「TOCHIKA」

80年ごろのアルバムかな?このブログは「ロック」がテーマなんだけど、この渡辺香津美はやっぱりジャズ出身なんだよね。でも、あの時代の日本の音楽を作った一人には違いないんで、そういうパイオニア精神はやっぱりロックなんだと思う。

 この「TOCHIKA」は80年代の渡辺香津美の代表作で、アルバム中の「ユニコーン」はテレビのCMでも流れてたので有名な曲だ。この頃の香津美のギターはテクニック的にも最も油がのってる時期で、とにかくメッチャ難しいフレーズでも、簡単にサラッと弾くかと思えば、普通レベルのフレーズもすごいスピード感で弾いてしまう、まさにギターと一体化したようなギタリストだった。ジャンル的にも、とにかく何でも弾けた。ジャズはもちろん、ロックもクラシックもボサ・ノヴァもフラメンコも、ベンチャーズも…。 

 でも、この人の持ち味はあくまでも、ジェントルで、アカデミックな香りのする音楽で、それがすごく好みの別れるところなんだろうなあ。14歳でジャズのリーダーアルバムを発表するぐらいだから(初録音じゃなくて、リーダーアルバム!)才能はあるし、とにかくいつもギター触って、弾いてるような噂も聞くし、きっと才能と、ギターの練習して、いつも向上していく努力(これも、また努力できる才能なんだけど)に恵まれてるんだろうけど、あまりにも巧すぎるのも考えモンですね。

 実は私の好きな渡辺香津美のギタープレイは、1978年ごろの坂本龍一のソロアルバム「千のナイフ」でのタイトル曲と、「エンド・オブ・エイジア」でのプレイ。日本のテクノミュージックの夜明けのようなアルバムで、この曲を聴いたときは、「日本の音楽が世界で羽ばたく。新しい時代が来るんだ」って単純に思ってしまって感動しちゃいました。

 そのあと、渡辺香津美のソロアルバム「KYLYN」でまた坂本龍一&矢野顕子と演奏してます。これも後のイエローマジックオーケストラに続くPOPさをもち合せた好盤で、聴きまくってました。それから、本格的にイエローマジックオーケストラがデビューして、その1979年か80年のワールドツアーに渡辺香津美はサポートギタリストとして参加するんだ。ロンドン・パリのヨーロッパ公演とロス・ニューヨークのアメリカ公演で、テクノミュージックは世界の音楽になっていくんです。そしてこのときの渡辺香津美の演奏は様々な伝説(実話です)を産みます。いわく、あのマイルス・デイビスからグループに誘われた。いわく、香津美の演奏を見ていたパット・メセニーの顔が青ざめてきて、ギターの練習しに急いで家に帰ったetc。
(このライブの演奏はyoutubeで見れますので、興味のある方はどうぞ。絶対ビックリしますから)

でも、この「TOCHIKA」はバックをマイク・マイニエリを中心とした、当時のニューヨークのTOPミュージシャンで固めてるので、ソリッドで緊張感のある演奏が楽しめます。少し突っ込んだ話をすると、曲によって、ドラマーがスティーブ・ジョーダンと、ピーター・アースキンを使い分けているようで、そこのところが、プロデューサーのマイク・マイニエリのこだわりです。
でも、まだ直に彼のプレイを見たことがないので、今度、機会があれば、できるだけ真近で見たいと思っております。